「応挙、若冲、広重」暑さを忘れた

2007年8月19日 18時05分 | カテゴリー: 日々雑感

久しぶりの夜半の雨で、猛暑がストップした半日、上野の東京藝大美術館に出かけた。上野桜木辺りから谷中にかけては、気に入りの散歩コースのひとつ。今回は、時間に限りもあり「金刀比羅宮 書院の美」だけ観て帰るつもりで。
まずは、上野公園の鐘楼の下にある昔ながらの料理屋「韻松亭」でお昼ご飯、このところ、上野に来るとお昼は必ずここ。相席だったので、近くに座った3組のご夫婦と、言葉を交わす。どちらも、美術館帰りのようで、余韻を楽しみながら雰囲気のいい食事時だった。
公園を抜けて藝大へ。「金刀比羅宮展」は、9月初旬で終わりなので、ちょっと混んでいる。
四国讃岐のこんぴらさんの表書院、公開が限られてきた奥書院の間に使われている江戸時代の襖絵130面をそのまま運び込み展示している。丸山応挙、岸岱、伊藤若冲の障壁画が、書院づくりを模して並べられている。日本美術愛好人の娘の影響をたっぷり受け過ぎて、私は以前から、若冲の絵が好きだ。通常非公開の金襴の襖に描かれた草花の数々「花丸図」。細密画のようでもあり、虫の喰った葉や重なった花弁など若冲の粘着的な筆が冴えている、でもきちんと並んだ花々は窮屈そうでなんだか若冲さんの面白みがない。やっぱり、にわか造りの奥書院の間では、空気も密度も違うからかな。
岸岱の柳や菖蒲、蝶々(これはコピーらしい)も流れとストーリー性があってとてもよかった。でも、一番好きになったのは、応挙の「虎」の襖絵。コの字の形にしつらえた表の間、使者の間ということだ。ふっくらとした足や顔が愛らしい虎が8匹、水を呑んだり、戯れたり、横になったり、睨みを効かせたり・・・あれ、豹柄が1匹いる!虎ではないな、子どもの虎?やっぱり豹ですね、これは・・・なかでも気に入ったのは、正面を向き、威嚇する白虎、足も爪も、瞳も毛並みも、いい。ずっとこの虎たちを観る。
讃岐のこんぴらさんに願かけるための長い高い石段を上らなくても、こんなに間近に江戸の時代の筆の跡がみえる。時空を超えて外気の暑さを忘れます。

その後、思いがけず藝大所有の歌川広重「名所江戸百景」の120枚全てを観る。版画だから、今までにもいくつかの展覧会で観たものだ。中でも、風景の近くにある提灯やら鯉やらすっぽんやらをファインダーの前面に大きく半身を取り込んだものが好きなので、楽しく一回りする。しかし、ニューオータニの画廊や太田浮世絵美術館のものより、摺りの色味が上等なように思う、特に青や藍の色が。何回見てもいい、興味が尽きない。江戸の海、王子滝野川の滝、大川端、井の頭、赤坂溜池、水辺がこんなに広く大きくあったのだ、江戸の時代は。水が描かれていない絵には山が富士山が描かれている。そんな時代だったのだ、江戸は。歌舞伎の書割のような風景、人間と自然がうまく一緒にやっていて、四季折々、生活と一緒に楽しんでいたのだ。
帰り道、国立子ども図書館から寛永寺のお墓の横を抜けて鶯谷へ出た。江戸の時代のおもしろさに遊んで、今の時代の難しさを感じながら帰った道は、嘘のように静かだった。(大塚恵美子)
〔写真上は、展覧会看板、下は、藝大奉楽堂、国立国際子ども図書館〕