個性が際立たない教科書見本本

2008年7月2日 02時33分 | カテゴリー: 子ども・教育

現在、図書館5館で7月5日まで「教科書見本本」の展示が行われている。21・22年度に使用する小学校の教科書、小・中学校の特別支援学級の教科書の採択に伴う公開だ。
先日、中央図書館で実際に手にしてみた。特に興味を惹かれて比べてみたのが、家庭科、保健、社会科だ。家庭科はなぜか、1社、開隆堂のものだけだったが。
●家庭科 小学校5.6年用 カラフル、ビジュアル系のつくりだが、内容は私たちの時代や子どもたちの教科書と大きな違いがあるわけでもない。男女平等は一応意識されていて、ごみや資源の課題では、3Rやレジ袋の削減に関する記述がある。石けん使用や地球温暖化対策、国内自給率やフードマイレージについては記述が見られないことは残念。

●保健 小学校3・4年、5・6年用 東京書籍・学研・文教社・光文書院・日本文教出版 学習指導要領が徹底しているため、どれも似通った内容だ。3・4年で「おとなへの体と心の変化」が取り上げられているが、体形の変化と「初経」「精通」の説明があるだけで、学研だけが、そのあといきなり「新しい命」の絵が入る。何のことだかさっぱりわからないし、5・6年では全く「性」に関する教育はされない。5・6年では、「思春期の心の健康」について触れているが、多様な悩みに肉薄できない内容だ。たばこ、酒、薬物の害はかなりウエイトが大きいがHIVについては差別をするな、という内容で、どのように感染するかが全く触れられないので、予防原則にも足らない。全般的に、科学的に応えていない、ということだ。性、ダイエット、不安感、虐待、援助交際、DVなどの現実を見てみぬふりをする教育では子どもを捉えられない。


●社会 小学校3・4年、5・6年用 大阪書籍・東京書籍・光村図書・教育出版 どれも写真が多用されている。自分の暮らすまちに始まり国際化や環境問題にも触れている。6年上は日本史だ。現代史では戦争を起こす理由、沖縄戦、原爆投下、憲法制定などほとんどが同じ記述といっていいほど。南京大虐殺は「ナンキン事件」とされ、沖縄戦では、ひめゆりや生存者の記録が掲載されているが集団自決がなぜ起きたかまでは言及がない。憲法と基地と自衛隊の存在の矛盾を指摘する教科書があった。6年下では、政治に関する分野が極めて少ない。身近な地方自治や選挙に関する記述がほとんどなく、政治とは何か、なぜ政治が必要なのかが理解できないだろうし、関心も生まれないと思う。

夜間開館の図書館でゆっくり目を通してほしい。教科書検定、学習指導要領といった国の管理下におかれた教科書の魅力のなさが淋しい。教科書だけが教育の指針ではないかもしれないが。生きた教材がもっと必要だろう、地域には資源が必ずあるのだから。
7月1日の新聞で、小学校の新学習指導要領の説明会を文部科学省が開き、社会科の解説書を公表したとある。沖縄戦、原爆投下など戦時中の大きな被害が明記され、戦争被害をより丁寧に教える学校が増えそうだ、との記事だ。過去と現実を正視しなければ未来は確実なものにならない。(大塚恵美子)