高齢者の住まい考 その1「コミュニティハウス法隆寺」

2008年7月23日 07時55分 | カテゴリー: 自分らしく生きる

7月10日(木)視察から

奈良県斑鳩町の「コミュニティハウス法隆寺」に伺った。2004年11月に入居が始まった共生型の住まいだ。入居者が資金を出し合う株式会社方式「安寿ネット」の形でスタートするまで、約2年7ヵ月をかけた集大成の住まいに現在は50歳代から80歳代までの4夫婦・3個人(11人)が生活している。

取締役の向平さんに法隆寺の駅に出迎えてもらい、大和の山々に囲まれた田園風景の斑鳩の里を歩いて10分少々で到着。区画整理された一画にある鉄骨2階建て、床面積640㎡の広々としたすてきなお宅だ。目の前には奈良時代の条里制の田んぼが広がり、敷地内には入居者が育てる菜園や花壇もある。
「権利は均等、情報は共有、話合いですべてを決める」この住まいはほどよくプライバシーが保たれている。それぞれに個性と内装を凝らしたお家(56㎡〜70㎡)を何軒か拝見。各居室にキッチン、浴室、トイレのつく普通の家と変わらない住まいだ。共用部分のホールやウッドデッキもインテリアがすてきで、緑の田んぼからの風が行きわたる。
セキュリティも万全で緊急通報電話、IH仕様、床暖房、エレベーターを備えたバリアフリーだ。80歳代の単身の女性たちからは「いい方ばかりで何の心配もなく、楽しく満足」と笑顔でお話を伺った。

ことの始まりは、シニアボランティア団体「ナルク」のメンバーから発想された「血縁をこえて助け合える自立と共生の家」づくりだ。コーポラティブ(可能な限りの共同の追求)とコレクティブ(個人の意思の尊重)を融合させた方式をとり、約1億3千万円の建設費は入居者が株主の会社を設立し、一人当たりの出資金は750万円だ。共益費は一人当たり毎月2万円。頓挫しかけた土地選びは、地元JAの協力を受け、地主と50年の定期借地権契約を結び、奈良県より「終身建物賃貸借事業」について認可を受ける。

入居者同士の信頼も厚く、理想的で順調な共生の住まい方だが、今後の課題も覗えた。高齢化が進んだ時に終の棲家としてなし得るかの心配と共に、建物の老朽化に伴い、緩やかな減価償却が始まることだ。8年を越すと当初設定された賃貸関係がなくなり、メンテナンスに向けた資金面での課題が出てくる。また、現在1室2名の退去者が出たが、保持する株式1500万円(夫婦仕様)の引き受け手が見つかっていない。当初のメンバーと同様の意志をもつ入居者が今後、継続されるかということも課題だろう。「持ち家」に伴うリスクといえばそれまでだが、悩みもあることを痛感した。
住宅政策が無策といっていいわが国において、理想の住まいのあり方をこれからも模索したい。(大塚恵美子)