未来の食卓

2009年8月15日 01時18分 | カテゴリー: 食の安全

食の未来を支える農と環境の関係

議員になってからはそうはいかないけれど、パリを3年に一度くらいは訪ねる。日曜日に開くラスパイユのビオ(オーガニック)の市場が楽しみで、すぐに食べる果物やチーズの他にハチミツやハーブオイル、ドライフルーツ、ジャムなどをいっぱい買う。セーヌ河の源流に近いシャンパーニュ地方のトロアという田園に囲まれた町に滞在したことがある。美しい黄金色に紅葉した林のきのこ狩りやリンゴの並木道、畑が続く丘など忘れがたく、これが農業大国、と感動したが、農村から進む環境破壊の矛盾や内実には気づけないままだった。

久々に銀座で映画を観た。フランスのドキュメンタリー「未来の食卓」だ。パリから少し離れれば豊かな農村地帯が広がるフランスは、食料自給率100%を超え、EUの農業総生産額の21%を占め、農産物輸出額が世界第2位の農業大国だ。しかし、2006年9月からの1年間、南仏の小さな村・バルジャック村の変革と日常を映し出した映像の記録から、大半のフランス農業の実態は、農薬、化学物質で汚染されているという事実に驚く。
2004年のユネスコ・パリ本部での「パリ・アピール」とよばれる「環境の化学汚染が人体に悪影響を及ぼす」とした宣言やガン研究者など専門家の提言にオーバーラップする形で、バルジャック村の小学校がオーガニック(農薬・化学物質に頼らない栽培)給食に切り替え、村が変化していく様子…それはまさに静かで暖かな闘い…を描く。
ワインづくりのためのブドウや果樹の生産農家は、実際に体に起きる異変や信号に十分気がつきながらも、量産や経済効果や農薬の呪縛から逃れられず、化学物質への依存から脱却できない。一見のどかで美しい農村風景だが、白く霧のように噴霧される農薬、化学物質に汚染され水を浸透させず流失していく土壌など、映像は真実を映し出す。
でも、小さな村の村長は、たった13人の議会とともに、オーガニックの給食という独自の方法を選んだのだ。食べ物は命と心に直結する。「オーガニックは費用がかかる?人の命と健康の代償は一体いくらだ?費用でなく相談相手は自分の良心、それしかない」と言ってのける村長。今も残る古代ローマ時代の水道橋ポン・デュ・ガールに遠足に行く子どもたちに、水の大事さを伝える教師。
農薬や食品添加物の入らない給食を「おいしい」と食べ、校庭で野菜を育てる子どもたちが味の変化を知る、調理員が給食は教育だ、と知る、親がおとなが変わる、そして少しづつオーガニックで生産する農家や扱う店が増えていく、村が変わる。
農薬のない畑や野原に蜂が飛ぶ、このミツバチが絶滅したならば4年で人間は死に絶える、とはアインシュタインの言葉だそうだ。持続可能な農業とともに、子どもに手渡す未来の食卓はある。
オーガニックってなに?子どもたちは言う「自然のまま!」。(大塚恵美子)