Lucie Rieの世界

2010年5月21日 02時38分 | カテゴリー: 日々雑感

六本木の国立新美術館で開催中の「ルーシー・リー展」にようやく行ってきた。1995年に亡くなった陶芸家の回顧展だが、6時の閉館時間まで2時間半近くも見入ってしまう。
ウィーン生れのルーシー・リーは工業美術学校で「ろくろ」に惹かれ学んだ後、早くから高い評価を受け、順調に制作を進めてきたが、戦時中にイギリスへの亡命を余儀なくされる。なぜなら彼女はユダヤ人だったから。
のびやかな美しい造形、さまざまな釉薬の色、艶、土のもつ質感、色のこぼれ、にじみ、細い線による掻き落とし、どれも調和してここちよい。
ルーシー・リーの名前は知っていたし、作品も知っていると思っていた。すっきりとモダンで無機質、スタイリッシュ、そんな風に。でも、この展覧会によって見事にくつがえされた。すっきりと美しいが体温のようなやさしさが滲み出る、そんな仕事の数々だ。
「窯を開けるときはいつも驚きの連続」とはルーシーの言葉だそうだが、作品はルーシーのみならず、私たちに驚きと発見を与えてくれる。窯を開け、取り出した時の釉薬の思いがけない窯変など、不思議の世界への飽くことのない姿勢はすてきだ。
バーナード・リーチとも親交を深めつつ、独自の世界が無限の拡がりをもって構築されている。初期の頃の鮮やかな色の取り合わせ、釉薬への限りない探求、迷いのない形、手元に置きたいテーブルウェア…

ゆったりとした国立新美術館の展示もよく、ゆっくり回遊して好きだと思った器を何度もぐるりと回って眺める。ピンクの釉薬の施された器、こげ茶とコバルトブルーの線がなんともいえない。また、線の滲んだ夢あるいは霧の中にいるような器もいい。緩やかなひねりのある造形と調和する溶岩のような釉薬の気泡、やさしい青みがかった灰色とピンクの肌。もう一度眺めたい。
娘夫婦が薦めてくれたルーシー・リー。今度は私があなたに薦めたい。まだ5月だけれど、私の中で、上半期最高の展覧会。6月21日まで。(大塚恵美子)