ブリュッセル滞在記

2011年12月14日 03時04分 | カテゴリー: 日々雑感

この秋、ベルギーに数日間滞在した。ブリュッセルとブルージュにそれぞれ数泊の旅だったが、1年半におよぶ暫定政権の国のあり様と10月に破綻したベルギー大手の金融機関デクシアに象徴されるEU経済の行き詰まりに関心があった。
国内の地域が異なる言語圏によって歴史的にも文化的にも大きくプロフィールを異にしていることにも多いに興味がそそられる。そしてなんといっても少年記者「タンタンの冒険」の誕生の地であり、エルジェ・ミュージアムを訪ねてみたかったのと、理由はさまざま、思い切って出かけてみた次第。
出発の直前に、新政権樹立の条件として2015年からの段階的脱原発で2025年までに原発の全停止をめざすとした「脱原発法」が制定されることになったと小さな報道を見つける。なんだか幸先がいいではないか。

空路でフランクフルト経由を選びその日の夕刻にブリュッセル着。ホテル選びのITサイトbooking com.の「本日のフラッシュセール」で即決したホテルは初の5つ星!少々古びてはいるが部屋は天井が高く、広く、清潔で気品があって、いうことなし。ただし朝食は高くおいしくなかったので、翌朝から老舗のホテル・メトロポールまで歩いて行き、アールヌーヴォの歴史的建造物の中で、道いく人を眺めながら、東京では考えられないほどゆっくり朝ごはんをとる。
公用語はオランダ語、フランス語、ドイツ語で、ちょっとした会話は、英語とフランス語のインチキちゃんぽんで通じてしまう、多言語の国だ。空港や駅、街中の標記もオランダ語とフランス語が併用されている。
歩き始めると、訪ねたい範囲や街全体があまり広くないことがわかり、ほとんど歩きであちこちへ、たまに地下鉄かトラムを使う。
ブリュッセルはEU議会のある国際都市だ、この界隈はEUの旗が翻るモダンなオフィス街の雰囲気。そして、王宮と王立美術館のある高台、この辺りが山の手だということがわかる。
グランプラスというかつての繁栄の象徴である壮麗なギルドハウスに囲まれた広場が下町の中心核であり、そこに位置する市庁舎の高い塔が目印にもなる。この周辺は観光客でごったがえしているが、ライトアップされた夜の風景はなんとも美しい。

パリほどお洒落で粋な感じはなく、どことなく野暮ったく沈滞している雰囲気が漂う。目立つのはチョコレートの店。カフェというものは、ほとんどなく、5,6軒おきにチョコレート屋がある。プラリネというチョコレートを5つほど選んで、歩きながら食べる、おいしくて値段が安いことに感激。さすがチョコレートの消費量が世界一の国。ビールもムール貝のゆでたのも安い、旨い。数種類のビールを楽しみ、しあわせな気分にちょっとなる(これが酔うということなのか)。

デルヴォー、マグリットを見るために王立美術館へ。クラナッハもブリューゲルもさほどなく、近代部門が工事中なのか目当てのデルヴォーは3点ほどで、悲しい。
アールヌーヴォの建物をそのまま活用した楽器博物館、マンガ博物館は建築も展示も興味深い。子どもたちが大勢きていて、ワークショップをやったりしている。アールヌーヴォの建築家として知られるオルタの私邸が美術館として公開されていて、ひとつひとつの階をあがり、建築と調度を両方楽しめる。

建物や工事現場を見るのも好きなので、100年前に内港が埋め立てられた地域や建物の取り壊し現場や土の色なども観察して歩く。中世の城壁の名残に出会ったり、小さな教会のステンドグラスが白蝶貝のように見えたり、見つけものも多い。街の建物の側面にマンガやイラストが描かれていて、見つけながら歩くのも楽しい。

日曜日に蚤の市をひやかした後で、ブリュッセル中央駅からIC(特急)で1時間ばかりの大学の街に出かけ、2009年にオープンしたエルジェ・ミュージアムを訪ねた。列車はウイークエンド料金ということで往復で600円くらい! エルジェ・ミュージアムは駅から近く、木の橋を渡っていくというアプローチもよく、見えてきた建物が秀逸なデザイン。中の設計もすてきだ。無料で貸してくれたイヤホンガイドは使い方も言葉も今ひとつ解らず、あきらめた。
「タンタンの冒険」とは少年記者タンタンが愛犬スノーウィやハドック船長とともに世界中を冒険するシリーズ漫画なのだが、タンタンの生みの親エルジェのあれこれやタンタンのデッサン、ひとこま、ひとこま丹念な制作の様子がよくわかる。世界各地の情報源やストーリーの楽しさも倍増するような展示だが、タンタンファンのRayが一緒だったら、このシーンは何、とすぐさまわかるだろうな、と残念に思うこともいっぱい。タンタンに関していえば、ブリュッセル市内の地下鉄の終点駅の壁面がタンタンで埋め尽くされていると知り、対面しに行ったり、とタンタン尽くしを堪能した。

2010年6月の総選挙から無政府状態が続いていたベルギーだが、対立する二つの言語圏の主要6党が、新政権樹立に向けて動き出し、この12日に発足となったばかり。留学生の瞳さんに話も聞き、一見、市民生活に問題はないように見受けたが、EUという連合体の中で一国の長期に亘る政治空白は、どのような影響を与えたのか、なかなか日本には伝わってこない。しかし、今日13日にベルギー南部の小都市リエージュで無差別テロが起き、死傷者が出たとの報道があった。ベルギーが気になる国のひとつになった。(大塚恵美子)