エネルギーシフトはエネルギー・デモクラシーだ   ドイツ・デンマーク自然エネルギー・スタディツアー ベルリン編

2013年2月14日 03時25分 | カテゴリー: 政治を変える

氷点下、粉雪舞うベルリン、ブランデンブルク門前で

 2月3日から1週間、自然エネルギー、市民電力のしくみを学ぶための視察(首都圏生活クラブ4単協主催)に派遣された。訪問先は、2022年までに全原発17基を閉鎖するドイツ(ベルリンとハンブルグ)。そして、原発をもたず、2050年までに総エネルギー消費(電力・熱・運輸)を100%再生可能エネルギーに転換するデンマーク(サムソ島とコペンハーゲン)へ。
まずはドイツ、ベルリン編報告から。

ドイツの電力に占める自然エネルギー(再生可能エネルギー)の割合は2012年で25%(日本10%)あり、2030年には50%、2050年には80%をめざす計画をもつ。風力が8%、バイオマスが5%、水力と太陽光が3%づつが2011年の自然エネルギーの内訳だ。
日本より緯度の高い北ドイツ、曇天の中、最低気温は氷点下で小雨や粉雪がちらつく。街行く人、自転車レーンを走る人は誰も傘をささない。室内に入れば、温水を使った暖房設備で快適だ。1989年に崩壊した東西ベルリンの壁の象徴ともいえるブランデンブルク門を境に旧西ベルリン、旧東ベルリンの街並みが広がるが、建物の雰囲気が異なる。西側は風格のある建物が目立ち富裕層の住人が多く、東側は比較的簡素な集合建築が目立つ。家賃が手ごろな東側に若者やアーティストが住まう傾向があり活気がある、との話を同行のコーディネーター山下紀明さん(環境エネルギー政策研究所)から伺う。通訳はエネルギー事情に精通するエルファディンクさんと手塚智子さん(えねみら・とっとり共同代表)という贅沢な布陣で学びがスタートする。

 

ベルリン自由大学ミランダ・シュラーズ教授と

ベルリン自由大学 ミランダ・シュラーズ教授(環境政策研究所長)
ドイツとヨーロッパにおける主要な研究大学のひとつであるベルリン自由大学(自然エネルギー関係では世界一か)の環境政策研究所では30~40人の研究員が自然エネルギーの研究を行っていて、山下さんはこのセンターに在籍しミランダ教授に師事。
ミランダ教授は、メルケル政権(緑の党の影響も反映)がフクシマをきっかけに設置し、ドイツの脱原発の方向性を決定づけた「安全なエネルギー供給のための倫理委員会」のメンバーであり、脱原発政策、自然エネルギーの推進政策について総合的な話を伺った。
脱原発を政策や技術の点からではなく「どういうことがしあわせか安全か」という未来への移行を倫理的な見方から議論と報告を行った倫理委員会は、2011年4月から5月末までの2か月間毎週末の議論や合宿、TVで10時間に及ぶ議論の生放送を2回行い、専門家や関係者だけではなく女性や若い人をよび意見を聞く公聴会を開くなど秘密裏の議論ではなく「対話」と「参加」が重要だ、というエネルギー・デモクラシーの成熟を体現したといえる。
再生可能エネルギー推進の下には、1991年の再生可能エネルギー固定価格買取制度の導入、2000年の再生可能エネルギー法施行などの電力自由化の制度改革があり、ものづくりから流通まで37万人の雇用を推進したとされる。
日本との差については、ドイツの民主主義とは何でも議論することであり、NGOネットワークを30~50万人規模でつくることができたことが大きい。原発に代わる再生可能エネルギーの目標値達成を16の州で競うなど地方が活発でないと無理だし市民オーナーシップなどパイオニアとして市民が動き出すことが大事だ、とエネルギーに対する分権、分散やデモクラシーについて述べられた。そして、日本も今からでは、と。転換もあったドイツから学ぶことができ、スキップの可能性もある、と励まされた。 連邦国家と中央集権国家の違いはエネルギー体制にも現れていると痛感する。

 

手渡した「NO NUKE FUKUSHIMA」の缶バッジを胸につけた「市民エネルギーベルリン」の理事会メンバー

市民エネルギーベルリン 
2014年にベルリン市と大手エネルギー会社ヴァッテンファル社との配電網に関する営業認可契約が切れることに伴い、配電網の営業権を買い取り、運営する組織として名乗りをあげるために1年前に「市民エネルギーベルリン」が市民によって設立され、理事会メンバーの女性から話を伺った。
再生可能エネルギーの推進と脱原発の目的で、電力から発生する利益を市民が使うためには市民参加が必要であり、配電網を買い取るメリットは、現在1億ユーロが企業に流れているが、利益が市に残り市民の役に立つことと、重要なインフラを自分で決めるという決定する権利を得ることだ、と。20年の契約が始まる今が市民の決定権にとって大きなチャンス、という。現在、500人のメンバーが出資し300万ユーロを集めた。ベルリン州議会(市議会)の理解を得て州と一緒に運営をすることを構想している。これは南ドイツのシェーナウが実現させたことでもあり、ベルリンでも可能でありシンボル的存在になると考えているそうだ。
7つの大企業も応募してきており、誰と契約を結ぶかは州議会が決めるが、価格で決める入札とは異なり価値ある市民参加だと政治家の判断は悪くないようだ、とのこと。
再生可能エネルギーの推進には市民が声をあげなければならない、電力をどこから得るかを考えなければならない、企業に対抗するには市民が動かなければならない、との思いが伝わってくる。決定する権利を市民に、とする「大企業から市民へのシフト」は、これまたエネルギー・デモクラシーだ。カンパや歯磨き粉の会社が事務所を提供してくれるなど市民の力とボランティアが機動力を発揮し、ちょうどTVが取材にきているなど「旬の話題の主」であるらしい。(大塚恵美子)