ディアスポラ(故郷喪失)から私たちが希望を見出すには

2013年3月29日 06時08分 | カテゴリー: 政治を変える

 

ザーラ・イマーエワさんとの対話・ギャラリー古藤(江古田)

「ディアスポラ(故郷喪失)から希望へ」としたチェチェン人のジャーナリスト、映像作家、アートセラピストでもあるザーラ・イマーエワさんの話を聞きに江古田へ。「チェチェンと日本を結ぶもの」として3.11以降を生きる日本人との「対話」のための企画をした友人の由美子さんの誘いによって。

時折のニュースによって「対テロ戦争」のように報道される断片的なチェチェンのこと。そんなこときり知ろうとしなかった私。
民族独立の動きを、ロシアによる2度にわたる武力弾圧と大虐殺を受け、今なおロシア軍の駐留により戦禍の中にあるチェチェン。いまだ世界の各地に亡命、強制移住させられた戦争難民の事実を私を含む国際社会は黙殺してきた。

ザーラさんは現在、チェチェン共和国の南方に位置するアゼルバイジャンのバクーにディアスポラ(故郷喪失)の亡命者として暮らす。かつてチェチェン人、高麗人(朝鮮民族)が追放されたカザフスタンへの在日韓国人三世の作家・姜信子との「対話の旅」=「旅する対話」を通じ、2004年から取り組むアゼルバイジャンでの「アートセラピーセンターDiDiインターナショナル」の活動を生み出してきた。トラウマを抱える民族を超えた子どもたちとの創作、パフォーマンスの映像がある。制作に携わったチェチェン人の子どもたちのセラピーの一環としてのミュージカルや同胞との出会い、アートを通じて自分たちの母語や表現を獲得し、自分たちは何か、という自問への答えを紡いでいくドキュメンタリー映像「DiDi(チェチェンの言葉で「手のひら」)」に見る子どもたちの笑顔、踊り、表情から普遍の希望をみることはできる。が、第一次チェチェン戦争の勃発に奇しくも立ち会ったジャーナリストの林克明さんのチェチェンの写真、亡命者の身であるザーラさんと在日韓国人三世の姜信子さんとの互いの民族の追放の地・カザフスタンの荒野を行く「旅する対話」をドキュメンタリーの映像におさめた「いって・らっしゃい」を見ると、知らない、無関心で済ませてきたことの大きさにつぶされそうな思いになる。

ロシア革命のあと、スターリンがチェチェン民族50万人をカザフスタンに強制移住させ、フルシチョフ、ゴルバチョフの時代に強制移住の実態が初めて明らかにされ、ソ連の崩壊と共にチェチェンは独立宣言をするが、ロシア軍が軍事侵攻を開始し1994年から1996年にかけて勃発した第1次チェチェン戦争、その後の停戦の時期を経て、1999年に再度ロシア軍は軍事進攻を開始し、その後の10年間に25万人が殺害された。経済や有効資源の獲得や権益だけが目的ではない戦争、戦争とは伝統や文化、いうなればアイデンティティを徹底的にうちくだく。この戦争は、いやイラクもそうだ、ありとあらゆる戦争というものは、いったい、誰が誰のために戦っているのか?

私にとって疑うことがない失うことがない、という思い込みにより希薄な祖国。祖国を失うとは何かをつきつけられた。それは3.11を境に30万人もの人が故郷を失った日本の状況をも映し出す。

ザーラと対話した姜信子が書く「予感なく戦争は始まる。そのことに私は戦慄した」。知ったふりをして終わりの物語にしてはならない。(大塚恵美子)