TPP、協同組合は対抗軸をつくれるか

2013年5月16日 23時55分 | カテゴリー: 政治を変える

2010年にアメリカを加えた8ヵ国で交渉が開始されたTPP(環太平洋経済連携協定)に、当時の菅首相が交渉参加の検討を表明したことにより日本でも動きが始まり、今年3月、安倍首相が交渉参加を表明し今に至る。
GATTウルグアイラウンドに対しても生活クラブ生協の組合員として懸念をもっていたが、GATTは少なくとも国内法が勝り、国内で決定できる余地があった。しかし、TPPは例外規定をもたず、決定ルールが参加国を包括的に拘束することになる。国の掟を超え、新自由主義、経済の自由化が前提だから、アメリカ主導のルールによって地域の不在は決定的になるのでは、と地域に立脚する協同組合の可能性を探りたく「日本協同組合学会」の「TPPで危機に曝される協同組合 自治とセーフティネットを守るために」に参加した。

高橋巌さん(日本大学)の基調報告と関英昭さん(青山学院大学・日本協同組合学会会長)のコメントによって、さまざまなことが確認され、結論からいって、阻止できない場合においては、地域の対抗軸をつくるべく役割が協同組合にはあると思った。しかしながら、協同組合の制度そのものが、先進的なヨーロッパなどに比べ希薄であり、組合員意識がいまやオルタナティブを担う気概があるか多いに気にかかり、杞憂は色濃く残ったまま、重い宿題を抱えて帰ることになった。

TPPの内容は、商品に対する関税の撤廃と非関税障壁の自由化だ。24の作業部会で協議されている内容は、「人、モノ、金、サービス」を自由にしていくものであり、契約の内容に関して、もう始まっている内容については変えられず、どこまで何を認めているかわからないという極めて限られた情報きりない。「日本は参加する自由しか残されていない」とは関先生の言葉だ。
TPPは自由化が前提の貿易のグローバル化であり、投資活動が最大限保護されることになる。つまるところ、アメリカのルールが強要され、グローバル企業の利益を優先させることになる。オバマ大統領の公約にあるように、アメリカは輸出を5年間で2倍にするとのミッション達成のために、アメリカのために市場開放を求めているとしか言いようのない代物だ。生活クラブ生協が手掛けてきた「自主共済」もつぶされ、「かんぽ生命」ががん保険参入を凍結させられたことは、もう既にアメリカに配慮した一例だ。事前協議では、日本が一方的に全面譲歩しただけで、懸案事項とされた自動車部門も丸のみであるし。日常のあらゆる場面に影響が出てくるんだろうな。二極化、格差が拡がることにつながることは必至だろう。

学会でコメントする関英昭さん、高橋巌さん、藤木千草さん(ワーカーズ・コレクティブ)

とりわけ、今回、改めて衝撃を受けたのは、ISD(紛争解決)条項についてだ。これは、投資家と国家の紛争解決ということで、TPPは「企業が国家を相手に損害賠償の訴えを起こすことができる」ということだ。従来の条約にはなかったことだ。法制度が異なる日本においてリスク、影響は予測できない状況にあり、国内でも議論がほとんどなされていないことが問題だとの指摘があった。

聖域なき原則によって「治外法権」におかれ、さまざまなセーフティネットが破壊されていくことになる。皆保険制度も食料自給率も遺伝子組み換え食品、添加物など食の安全基準も失い、国際入札によって働く場も縮小されていく。
地方分権といいながらも、主権が失われては手も足もでない。地域でセーフティネットの再構築をどのように図るか、オルタナティブの対抗軸を創り出すしかないが、最初に書いたとおりに、あらゆる地産地消をしかけ、担い手は非営利セクター、ワーカーズコレクティブや協同組合であってほしいのだが。日本生協連も一枚岩にはなりきれないようで、歯がゆい思いだが、動きをつくらなければならない時にある。

2月に欧州の自然エネルギーに関するスタディツアーで、エネルギーを市民の手に取り戻したデモクラシーと協同組合の可能性を受け止めて帰国したが、TPPを前にギャップに苦しんでいる。(大塚恵美子)