世界が食べられなくなる日

2013年8月17日 13時40分 | カテゴリー: 政治を変える

 刺激的なタイトルの映画「世界が食べられなくなる日」を少し前に観た。「遺伝子組み換え(GM)」という暴走するテクノロジーの実態と未来を考えるフランスのドキュメンタリーだ。
この映画の協力者として名を連ねている生活クラブ生協の遺伝子組み換え対策は、85.6%に及び、家畜の飼料も非遺伝子組み換えだということを多くの組合員は知っているが、食をめぐる世界では常識とされていない。いや、知らされていない。
実に日本は遺伝子組み換え食品の輸入大国だ。トウモロコシの世界最大の輸入国であり、9割がアメリカ産でその88%が遺伝子組み換え品種だ。用途は主に家畜の飼料と加工食品の原料となる。そして輸入された大豆の7割がアメリカ産、その93%が遺伝子組み換え品種だ。とりわけ圧倒的なシェアを誇るのが多国籍企業のモンサント社だ。

徹底した取材で多国籍企業の本質を描いたマリー・モニク・ロバン監督の「モンサントの不自然な食べもの」につづく遺伝子組み換え食品の実態を追ったフランスのジャン・ポール・ジョー監督のドキュメンタリー作品が「世界が食べられなくなる日」だ。映画では200匹のラットに2年間、GMトウモロコシと農薬ラウンドアップを使った極秘の長期実験によってラットは死亡あるいは広い範囲に腫瘍ができたという衝撃の結果が淡々と映し出される。現在、市場に流通する遺伝子組み換え食品の安全基準は、ラットにGM作物を3か月間与え続けても問題がないという実験結果に基づく。

映画は、未来の食卓の可能性に「アグロエコロジー」を示唆する。セネガルで実践される新たなひとつの可能性だ。「タネを大切に育てる、毎年タネを収穫し、GM作物の侵入を阻止するんだ。植物や穀物は未来のための大切な資本だ」。タネは命の源だ、テクノロジーによる支配か、古来から受け継がれる知識か、どちらを私たちは選ぶかだ。

映画を観ると同じ時期に、私は堤未果の「(株)貧困大国アメリカ」を読んでいたが、映画と堤の著書はまさに同じ実態を語っていた。

モンサントは世界46カ国に進出している多国籍バイオ科学メーカー。PCB、枯れ葉剤、牛成長ホルモン、除草剤ラウンドアップ、遺伝子組み換え作物の開発企業として知られる。企業と政権のつながりが実に深いアメリカでは、オバマ政権も多大な選挙資金を多国籍企業から得ていてFDA(食品医薬品局)の顧問にモンサントの副社長を抜擢している。彼はかつてFDAのGM作物担当副長官として食品ガイドラインからGM表示義務を削除し、モンサントのGM製品第一号の遺伝子組み換え牛成長ホルモンを承認した人物とのことだ。モンサント社のGM種子を使う農家は毎年種子と農薬を買い、世界中どこでも同じライセンス契約を結ぶことになる。種子が支配されてしまうのだ。遺伝子組み換え食品の表示義務がないアメリカは、2013年3月に「GM作物で健康や環境に影響が出ても因果関係が証明されない限り種子の販売や植栽停止をさせることは不可とする」モンサント法、とよばれる保護法までつくってしまう。その国アメリカと結ぼうとするTPPに危険を感じないわけにはいかない。

7月末の朝日新聞に、GMトウモロコシに害虫が発生したとの記事が掲載された。抗生物質耐性の歴史と同じことが既に起きている。

3.11原発震災直後に被災地を取材したジョー監督は、遺伝子組み換え作物と原発は「どちらも自然を支配しようとする技術であり、人や環境に取り返しのつかない被害を与える」ことで共通していると語る。どちらも未来の食を奪う危険性をもつ。
映画が終わりエンドロールが流れる中に、協力者として生活クラブ生協の名を見た。そう、私たちは未来の食を維持する先端でいつづけなければならない。(大塚恵美子)