子どもの貧困に向き合う「山科醍醐こどものひろば」

2014年4月28日 16時45分 | カテゴリー: 政治を変える

 

「山科醍醐こどものひろば」理事長・村井琢哉さんと同行の佐藤真和議員

 私が折りにふれて開く2冊の新書がある。「格差社会 何が問題なのか」(橘木俊詔 2006年)と「子どもの貧困」(阿部彩 2008年)だ。どちらも社会の格差によるニートやフリーターの出現、女性の貧困、子どもの貧困を問題提起してきた。質問や提案の前提に使うこともあったが、一般的にピンとこない、という顔をされることが多かった。しかしながら、ようやく20136月に成立した「子どもの貧困対策法」が認識を拡げ、「子どもの貧困」がクローズアップされるようになり、NHKの番組でも頻繁に取り上げられるようになってきた。

15.7%といわれる子どもの貧困率だが、6人に1人の子どもが貧困の課題を抱えていることになる。法律制定は一歩の前進だが、そのうえに実効性のともなうアクションがあってこそ解決につながる。法律制定前の2010年から制度のすきまを埋めるように子どもの貧困対策に取組んできた「NPO山科醍醐こどものひろば」を423日に訪ね、村井琢哉理事長から話を伺う機会を得た。 

京都市の山科地区・醍醐地区には3万人の子どもたちが暮らす。その中には、親の経済状態に左右され、学習に取組めず、情報の差別化が起き、孤立し、さまざまな体験や経験が不足することで成長発達する機会も奪われていく子どもたちがいる。このことはこの地域だけの問題ではなく、どこの地域でも顕在化してきた社会の課題といえる。

家庭だけでも、学校だけでも解決できない貧困という課題に、生活支援、学習支援によってスタートラインを揃え、子どもの育ちを支えるしくみが必要になる。ある分野にきり手出しができない専門家による支援には限界があり、あたりまえの日常を約束するしくみが必要となる。専門家たる指導者がいないという「山科醍醐こどものひろば」はNPO会員のほか、学生を含むボランティアが年間300人、インターン15人、有償職員17人によって運営されている。訪ねた日も「げんきスポット03(つどいの広場事業)」を終えた女性たち、「こども生活支援センター」まで道案内してくれた学生ボランティアの方たちと出会った。

地域や学校でアンテナをはり、困っている子どもたちにアプローチができ、トワイライトステイやナイトステイ、学習支援にやってくる子どもたちに「線」は引けない、だから制度に縛られた補助金だけでなく公益財団基金の事業指定寄付プログラムを活用したり、目的が縛られない寄付(2012年度は718万円)に重きを置くことで共感やつながりを拡げ、全ての子どもを受け入れるという柔軟な発想をもつ。この点は同様の支援を行う大阪市の「こどものいえ」との違いであると聞く。

トワイライトステイ(夜の生活支援)には年間20人くらいの小中学生がやってくる。数か所ある居場所でマンツーマンで9時までの夜を過ごす。参加する学生ボランティアは子どもにとっての成長モデルともなる。学生は子どもたちから得た社会の縮図から学びを得る双方向の関係が成り立っているようだ。「あそびっこクラブ」「わんぱくクラブ」「楽習サポートのびのび(学習支援)」や中学を卒業した後の「居場所」、「げんきスポット0-3」「銀のさら お寿司教室」など、これも必要だね、ということで次々とスパイラルして膨らんできたそれぞれの事業が「こどものひろば」を真ん中にして手を拡げ、困難を抱える子どもたちを支える形をつくっている。子どもだけの居場所というだけではなく、子どものことで人がつながってきた場となっている。
33年前に動き出した会員制の「親子劇場」やキャンプといった事業から、2000年にNPOの認証を取得し「山科醍醐こどものひろば」の活動を開始し、2010年から地域の「すべてのこどもたち」を対象とする子どもの貧困対策という公益的事業へと展開。子どもと文化の体験をつなぐここならではのやり方で、子どもの育ちに多様な選択肢をもたらす包括的支援へと広がってきたということだ。

気づきはあっても、住民同士のつながりが切れている現状は、制度の狭間で困っている子どもたちへのアプローチがしにくい状況にあり、子どもの貧困が問題という以上に、こぼれ落ちる子どもたちを受け止められずにいる地域、社会がアクションを起こせない状況が問題、との村井さんの指摘だ。入り口を子どもの貧困問題として地域、学校といった社会環境に再アプローチしていこう、と。
アンテナをはり、傷をつくる手前で早期発見し、子ども時代を支援し予防する。親の姿をみて「生活保護をもらって生きる」ことが将来の夢だった子どもにとって、頼れるおとなと出会い、いろんな生き方があることを知ることの大事さ。子どもが変わると親も変わる、子どもをとりまく社会に変化を起こすことになる。

村井さんは言う「監視と気にかけていることは違う。子どもの貧困という言葉ではなく『ご飯食べにおいで』」と。
「子どもの貧困」という社会の課題に向き合う。対処だけでなく、労働政策、雇用、社会保障、教育といった根本の課題への対策へどうつなげていくか、すべてのおとなが肝に銘じ、動き出したい。(大塚恵美子)