伊万里市民図書館・武雄市図書館 その2

2014年9月21日 21時35分 | カテゴリー: 政治を変える

●図書館の概念をくつがえす「武雄市図書館」のチャレンジ

前日の「伊万里市民図書館」につづき、武雄市図書館を訪ねた。2000年建築の図書館の躯体も優美な曲面を備え洒落ている。5カ月の改装、準備期間を経て、2013年4月に指定管理者CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)によって管理運営される図書館へとリニューアルした話題満載の図書館だ。

9時の開館前に、図書館ファサードには視察とおぼしきいくつかのグループが。開館と同時にメディアホールに他団体(議会や教育委員会、図書館など5グループ)と説明を伺うために入る。途中から樋渡市長が到着され自らがパワーポイントを使って説明を始めた。しゃべる、しゃべる、止まらない、そのほとばしる思いに圧倒される。図書館長の出る幕などないのだから...
武雄市出身の総務省官僚だった就任8年目の市長の「市民価値のある公共図書館」像は、9時から21時まで365日開館し、多くの市民に使ってもらえる図書館だ。TSUTAYA書店のような図書館があってほしいと願い、そのために、議会に民間の力を活用した指定管理者制度導入を提案し、組む相手は意中のTSUTAYAを運営するCCCを随意契約で、補正予算を計上するというステップの踏み方で実現にこぎつけた。
名指しされたCCCとしても図書館と組む初めての挑戦。地元も図書館協会も識者も賛否両論というより圧倒的な批判の渦の中、市民アンケートを取り、70.4%の新図書館構想への期待を受け、議会は決定した。

リニューアル後の1年で来館者は100万人、貸出冊数は2倍となったそうだ。指定管理料は年間11000万円で5年契約。職員体制は62人(館長、CCC社員5人、司書13人、アルバイトなど43人)で館長とリニューアル前の図書館職員は全員残留されたとのこと。資料費は年間1400万円。リニューアル後の市民アンケートでは、新図書館の満足度が83.1%、スタッフの満足度は69.1%とのこと。
思いつきの人と称される市長のようだが、武雄市という5万人足らずの地方都市に対する「諦めと自虐史観」で終わらせてなるものかというパッションは、ちょっとすごい。赤字の市民病院の民営化で医師会を敵に回しただけでなく。

図書館というものが、これだけ注目を集めるということ自体、すごいことである。
図書館とは誰にでも開かれた知る権利を保障するものであるべきだが、本を借りるためだけの場所でなくてもいいと思う。子どもが本を知る場所、いくつになったって学ぶことができる場所、解決に結び付けることができる場所、若い子がたまることができる場所、くつろいで本や雑誌が広げられる場所、何かが見つかる場所。排他的でなく居心地も悪くないんだったら、いいじゃないか、と私は思う。

私は実は、武雄市の樋渡市長のTSUTAYAを入れるという構想を聞いた時点から、東村山市立図書館協議会の元会長としても「ばっかみたい!」と最も懐疑的否定的な批判論者のひとりだった。でも、見ないことには話にならない。だから「私目線の検証」にやって来たのだ(上から目線か!)。

・ここは図書館か、本屋か

さて、館内はいかがか。吹き抜け天井の明り取りと間接照明の多用で、一言でいえばシックでおしゃれ、本のある圧倒的にすてきな図書館空間だ。改装費用は45000万円とのことで、グラフィックデザイナー原研哉が内装やデザインを手がけ、図書館というより、これはもう、よくも悪くも「代官山TSUTAYA」なのである。本屋の中に図書館があるのか?ってここがもう気にいらない人は相当いるに違いないが、私は図書館も本屋も好きなのである。
音楽が低くかかり、スターバックスのコーヒーの香りがする。TSUTAYAとスタバが「目的外使用(賃料を払う)」ということで面積の14弱を占め、蔵書か物販かどうかは書架のサインで見分ける。20万冊の所蔵図書をすべて開架にしたため書架の背がすこぶる高い。蔵書はいわゆる10進分類ではなく、カテゴリーごとに小部屋仕立ての部分もあって、そここに落ち着ける場所がみつかりそうだ。コーヒーを飲みながらの読書(販売の本や雑誌も同様に)や調べものができ、これまた代官山TSUTAYA風なのだ。

子どものスペース・児童書コーナーは館内の奥にあり、リニューアル後のおはなし会(毎週土曜日)への参加者は4倍近くになったそうだ。
2階のアーチ形の書架と机の配置も開放感があっていい。

私はこういう図書館があってもいい、と思う。開館時間に制限があり、静かに本を読み調べものをするだけになりがちな図書館の枠、概念をくつがえしたモデルだと思う。ただし、東村山ではこうでなくてもいいや、と思う。だって、代官山のあのTSUTAYA2階に行けばいいからさ(笑い)。

なにより大事なのは、私のまちの図書館はどうあったらいいのか、というものさしをココロに抱くことだ。

・課題

私が気になる課題のいくつかを。運営管理のみならず、蔵書計画、選書もCCCが行うこと。Tポイントカードか貸出カードかを選択できるようになっていて、自動貸出機を使うとポイントが加算されるしくみになっている。協定にも定めてあるが、やはり個人情報の扱いが気にかかること。雑誌が30タイトルというのはあまりにも少ない、TSUTAYA600タイトルが並び、読み放題としても、バックナンバーはない訳だし。それと閉架書庫がない、というのも頭打ちに近い。資料の保存、継承も図書館の大事な役割だ。司書を解放したというがレファレンス業務はたんなる「お相手」サービスだけではない、今後の支援、蓄積のあり方に期待したいが。

公共の図書館も多くの課題を抱えている。公共施設の老朽化・再生もせまられ、定数削減がひびき、いまや委託か直営でも嘱託職員司書で成り立つ図書館も多く、官制ワーキングプアを生み出していることも事実。リクエストや貸出業務に司書の力を割かれ、資料費は横ばいかジリビン。レファレンスやビジネス支援が提供できる図書館の力量にも限りがあるのではないか。地方都市の本屋の廃業も多い中「知のインフラ」が蓄積されず空虚ではいけない。

今のところ、私は図書館に指定管理者を導入する必然性は見出さないが。そりゃ、指定管理者はピンキリだ。財政難だが図書館はつぶせないからTRCか丸善(これ象徴的に言ってるだけで)に丸投げしときゃいい、ってもんじゃない。だいたい視察に訪れる議員たちのどのくらいが自分のまちの図書館を使い、理解しているのだろうか、と。

「図書館とはなんぞや議論」にかしましく灯りをともしたことは誠に歓迎だ。武雄市を有名にし、経済効果をあげただけでなく、地域のコミュニティの核にしっかりなってほしいと願う。
樋渡
市長の次の構想は「キッズライブラリー」とのこと。いいね、楽しみにしている。市長がいつまで飽きちゃわず、全力投球できるのか杞憂、いや興味があるが。でも市長はタネをまいた、育てるのはやっぱり市民なのだ。よりよいものにつないでいくのは、やっぱり市民なのだ。(大塚恵美子)